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君のとなり
龍麻が横になっているのは、パステルカラーのソファ。
ソファの端っこに座っている天童の膝に頭を乗せて、最近読み始めた文庫本を掲げていた。
天童はといえば。その爪の先まで整った長い指で煙草を挟み、立ち上る紫煙を眺めていた。
「アンタ、女遊び激しいよな」
「あ?いきなり何を言い出すかと思えば、なんだ急に」
説明を求める目が、龍麻を見下ろす。
自覚がないのかコイツは、と呆れたような顔をした龍麻だったが、急にその話題を振ったのは自分だ。一応説明する気になったらしく、掲げていた本にしおりを挟んでテーブルの上に置いた。
龍麻と天童がいるのは、都内のとあるマンションの一室。
名義は天童のもので、二人が逢瀬を重ねる場所として主に使われている。
素性を明かさない関係だったので、互いの家を行き来するわけにもいかず。
かと言って、毎回ホテルというのも問題がある。
ならばいい機会だ、といって天童が部屋を借りたのがつい最近。
週末は、この部屋で過ごすのが当たり前になっていた。
「たまに、っていうか毎回?ココにひっかき傷がある」
そう言って龍麻が指を指したのは、背中。
情事の際についたのだろうと簡単に想像がつく傷だ。
「……何故、女だと分かる?てめぇの付けた傷かもしれねぇだろ?」
「爪ちゃんと切ってるし。それに、俺はアンタにしがみ付いたことはない」
「…………」
「図星?毎晩毎晩、よく飽きないねぇ……もしかして、さびしくて一人寝できないとか?」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ」
べちっという音がして、額に痛みが走る。
叩かれた額を押さえて、龍麻が恨めしそうに天童を見上げた。
天童は小馬鹿にしたような笑みを浮かべて見下ろす。
持っていたはずの煙草はいつのまにか、机の上にある硝子製の灰皿の中で燻っていた。
「そういうお前こそ、いつも俺にひっついてるな。そんなに俺が好きか?」
「甘えの補充、だよ」
「は?」
「しっかりしないとって、いつも気を張ってるからね。たまには甘えたくなるでしょ」
「俺でそれを補充しようってのか」
「そういうこと」
髪をゆったり撫でてくる手の温度に、目を閉じて身を任せる。
小さな笑い声が頭上から聞こえてきたが、今はそれを気に掛けるつもりはなく。
じゃれるように髪を引っ張られたり、ゆるく三つ編みをされたり。
天童に好きなように髪で遊ばれているのを、龍麻は咎めたりはしない。
むしろ、そうされていることが気持ちいいくらいだ。
甘えたり、甘えられたり。
穏やかで平和な休日は、こうして過ぎて行く。
天童を書こう書こう、と思っているのに。
何故か跡部になったような気がしてならない。うむむ。
あぁ、ついにここまで毒されていたのでしょうか。
2005.10.20 加筆修正