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形のない確かなもの
秋空に生える赤や黄色の鮮やかな木々。
龍泉寺から見える秋の風景も綺麗だが、京都で見る風景も見事だ。
事の成り行きで、歩いて京都に向かうことになった。
しかも女もいるのだから余計にゆっくりだ。
さっさと済ませてしまいたいのが本音だけれども、こうして落ち着いて風景を見ながら歩くのもなかなか楽しい。
先を歩く小鈴のはしゃいでいる声や、美里の笑い声。
二人を守るように、雄慶も前方を歩く。
その三人から大分離れて、京悟と龍斗は歩いていた。
京都に近づく度に、思考に意思を奪われていくように無言になっていく龍斗。
空や山を見る目は切なく。痛々しく。涙が流れそう。
それでも、周りに人がいる時は分からないように笑顔を見せる。
そうされると、余計に見ていて辛くなる。
だから京悟は、それとなく小鈴たちを先に行かせて、龍斗の周りから人を遠ざけた。
しばらくは何も喋らないで歩いていたのだが、京悟が声をかけた。
「……………何、があったか分かんねぇけどさ」
周りの風景を映していた瞳が、京悟の方に向けられる。
その瞳に、感情の起伏が感じ取られることはなく。
普段は上手に隠しているのだろう、龍斗の持つ闇が見えた気がした。
下手をすれば、そのまま引き摺り込まれてしまいそうなほどの闇を感じる。
しかし、京悟は怯むことなく龍斗の瞳をじっと見つめて。
「言いたくなったら言えばいい。無理に聞いたりしねぇから。言ってくれなくても、俺はお前の隣にいるのをやめるつもりはねぇ」
にぱっと、太陽みたいに笑う京悟。
不意をつかれて、ただ京悟を見つめていた龍斗だったが、やがてふっと笑顔を見せた。
「………………そう、だな。うん、いつか、言えたらいいな」
張り詰めたような空気が和んだのが分かって、京悟は安心する。
行くか、と言えば、龍斗が二つ返事で了承してくれる。
こうして龍斗が隣にいて、自分に答えてくれるのが嬉しく、とても自然だと思う。
腕を引いて歩きだすと、見た目よりもずっと細い腕に驚いた。
強いように見えて、実は誰よりも弱ぇのかもしれねぇ。
ぽわり、と自分の中に生まれた、守ってやりたいという気持ち。
柔らかな温かみを持ったその気持ちが、指先にまで染み渡っていく感じがした。
このまま、この温かさが伝わって、龍斗に届けばいい。伝えていけたらいい。
京悟は掴んだ手に、ぎゅっと力を込めた。
この友情は、いつか、その姿を変えるのか、否か。
それはまだ、未定のこと――――。
京梧初書き。蓬莱寺一族、初書きです。偽者……
2005.10.20 加筆修正