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龍麻の手は綺麗だ。
美 手 指 愛 好 家
白い皮膚。
細くて長い指。
爪の形も整っている。
女の指のように細くもなく、柔らかいわけでもない。
だからといって、男の指のようにごつごつしていないし、硬くもない。
その造形。全てが、俺好み。
龍麻の手は、ひらひらと舞うように動く。
流れるようなその動きは、意識していないのに舞を舞っているように見えるのだ。
遺跡で化人と戦闘するときも、罠を解除するときも。
八千穂や椎名と潜った時などは、彼女たちをエスコートするように、さり気なく動く。
龍麻は、基本的に女性には優しい。
ピアノも弾けるらしい。
それを俺に教えたのは、取手だった。
「とても優しい、まるで澄んだ水のような音を持っているよ」
そう言って、幸せそうに微笑んだ取手の姿を思い出す。
白と黒で構成された鍵盤の上を、この指は優雅に滑るのだろう。
鍵盤の色は、龍麻の肌の白さを際立たせるのだろう。
想像したらドキドキした。
黒塚とよく話をしているらしい。
゛彼の王国゛ともいえる部室に訪問することもあるという。
あの白く細い指で宝石の原石を掴んだら、きっと絵になる。
石の持つ深く暗い色合いと、彼の皮膚の色とのコントラスト。
石の冷たさと彼の手の冷たさ。
龍麻の手はひんやりと、冷たい。
石を掴んだら彼の冷たい体温でも、石に伝わるのだろうか。
龍麻は読書家。
これは七瀬の話だ。授業をサボっては図書室で読んでいるという。
図書室の一番奥、窓際の席が彼のお気に入りの場所で、いつもそこに座って読んでいる。
日常生活では眼鏡をかけていないが、授業中や読書の際にはかけている。眼鏡の効果で、いつもより真面目に見える龍麻の姿は新鮮で目を惹かれてしまう。
ページを捲る指、窓から射し込む光。
下を向くことで、視界の邪魔になるであろう長めの髪を掻き揚げる手。
読書に夢中でいつになく真剣。
見目麗しい龍麻だから、きっと絵になる。
煙草を吸う事を知っているのは、恐らく俺だけだろう。
茶色い紙で包まれた甘い香りのする煙草を、彼は好んで吸っている。
煙草を挟むその指に、色気を感じる。
煙を見つめるその視線に、龍麻と俺の距離を感じる。
皆守甲太郎の屋上での昼寝場所といえば、給水塔の影などの入ってきてもすぐには発見できないような場所である。
その理由としては、他人に睡眠の邪魔をされるのが気に食わないから。その一点につきる。
けれども今日は違った。
手摺りに肘を預けて立っている緋勇龍麻。
その右隣に、手摺りに背を預けて瞳を閉じて座っている皆守甲太郎。
二人の間に会話はなく、龍麻は愛用の煙草を吸っている。
11月の風が、二人の間を吹き抜ける。
冷たいその風を、さして気にした様子もなく二人は無言を続けていた。
何も寒い時期に外に出なくてもいいのに、と思うのだが授業をサボるのにこれほど適した場所はない。龍麻も意外に面倒臭がりで、よく屋上に来ている。なんでも、「煙草を吸うのに一番困らないから」というのが理由らしい。
皆守が寝ている所を龍麻が起こしたり、一緒に寝てみたり。逆に皆守が来てみると龍麻が寝ていたり煙草を吸っていたりしている。
つまりこの場所は、「二人の約束のない待ち合わせ場所」のようなものになっているのだ。
「……今日、暇?」
「………………急になんだよ」
沈黙を破って、龍麻が問いかける。
眠りを妨げられたと不満一杯の表情で、皆守が問い返した。
目を細めて困ったような笑顔をしながら煙草の火を携帯灰皿で消し、もう一度問う。
「だから、今日暇なら《墓》に付き合ってよ」
龍麻は右手で皆守のふわふわと柔らかそうなクセのある髪を、触れるか触れないかの微妙なタッチで撫でる。
撫でられた方はさらに機嫌を悪くしたようで、撫で続ける相手を睨み付ける。
睨まれた方はというと、そんな反応すらも可愛い、とでもいうかのように優しい微笑を浮かべていた。
まるで、子供扱いだ。
皆守は思う。
彼は時折、こういう扱いを自分にする。
同い年、同級生、そして自分が誰よりも傍にいるはずなのだが……こういう時の彼は、とても遠い存在に感じる。
「触るな」
考えれば考えるほど、沈んで行きそうだ。
龍麻は謎の多いミステリアスな男で、底無し沼のように引き込む男だから。
撫で続けていた右手首を乱暴に掴んだ。
急に掴まれて驚いたかと、手の主を見上げれば、予想していたのか余裕の笑みが返ってくる。
それを見て、余計に腹が立った。
視線を落として、掴んだ手を見る。
綺麗だ、と惹かれていた手が目の前にある。
思わず空いた自分の手で、その美しい手に触れる。
その形、肌の感触、柔らかさを記憶するかのように。
手の甲から小指、薬指。皮膚の下の骨の感触。そして、手の温度。
「皆守?」
今度は両手でその形を記憶する。
爪の感触、中指から人差し指にかけて。
ふうわりと鼻につく甘い香り、気付いて指の動きを止める。
煙草のフィルターが甘いのだ、と前に龍麻が言っていたのを思い出した。
甘い匂いに誘われて、人差し指を舐めてみる。
「!?」
一瞬だけ、甘い味がした。
その味と一緒に、冷たさが舌から直に伝わってくる。
屋上にずっといたせいもあるが、龍麻の体温はもとから低い。けれども、自分の舌の触れた所だけが、じんわりと熱を持っている。
それが、なんとなく嬉しかった。
「ッ、皆守……一体どうした?」
頭上から降る龍麻の声にも、いつになく焦りの色が感じられた。
逃げられないように掴んだ手に力を込めながら、触れるだけのキスを指先に贈る。
一本一本の指へ、丁寧に。
中指を軽く咥えて舐めると、もう一度あの甘い味が口の中に広がる。
舌で触れてみると、龍麻の指が熱を持つ。
自分の温度が、冷たい彼の指に伝わったのだと感じる。
龍麻の自由な左手が、皆守の頬を撫ぜるように触れる。
その指はひんやりとしていて、龍麻の表情は優しく穏やかだ。
子猫を見守る母猫のように、優しく見つめて頬を撫でる。
慰めるようなそれを一瞬目に捕らえるが、すぐに視線を反らす。
慰めが欲しいわけではない。
救済が欲しいわけではない。
赦しが欲しいわけではない。
きっと自分は、この美しく綺麗で冷たい゛コレ゛が欲しいのだ。
唇を舐めたら、こんな味がするのだろうか……そんなことを考えていた。
目指せ、微エロ……そして撃沈。皆守が変態チック、寧ろ壊れ気味?
手、指フェチは私です。骨っぽいけど、適度に肉のついた指が好みです(笑)