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君に興味あり
その男、"皆守甲太郎"を最初に見たのは屋上だった。
転校初日。9月の終わりにしては、寒い日だった。八千穂明日香の強引ともいえる誘いを断ることができず、引っ張り出された冬が近い寒空の屋上。
なんでこんな寒い時に屋上なんだ、と内心では文句ばっかり言っていたが、それを気付かれないように顔には笑顔を浮かべていた。
早く早く、と楽しそうに八千穂は俺の腕を掴んで離さない。
俺はそれに困ったように笑顔を顔に貼り付けながらついて行く。
途中で色々と変わった生徒に会ったが、彼らにも同じような笑顔で挨拶をした。
やっぱ初対面の人には笑顔笑顔。
敵意を笑顔で消して、心の内では冷静に。利用できるか、できないかを判断すること。
自分の本音を相手に気付かせず、悟らせず、好意でもって相手の警戒を可能な限り解くこと。
――――俺に、《宝探し屋》としての道を教えてくれた人の言葉。
それと、女性には優しく愛想良く。拗ねられると厄介だし、機嫌をとるのも大変。
これは今までの生活からの教訓だ。
八千穂の話を聞きながら、俺はずっとそれを頭の中で繰り返していた。
屋上に着くと、八千穂は《墓地》のことについて語った。
行方不明者の持ち物が埋められているという墓場、《生徒会》が管理し、墓守によって守られる、一般生徒は立ち入りを禁じられている場所。
話を聞いただけなのだが、かなり怪しい。
それを聞いて、あそこに俺の求めてきたものがある、そう直感した。
こんなに早く見つかるとは予想外だった。わざわざ屋上まで足を運んだ甲斐があるというものだ。早速、今夜にでも行ってみようと決意する。
彼女はなかなか役に立ってくれるかもしれない。朝のホームルームの様子を見ても、友達が多いようだった。誰とでも仲良くなろうとする性格は、俺に対する接し方や先ほど会った白岐という女生徒への接し方からも分かる。そして未知なるものへの探求心……それは俗に噂好きともいうのだが……學園内での情報収集には役立ってくれそうだと、そんな計算高いことを考えていた。
そんな思考を掻き消すかのように、辺りにふっと広がるラベンダーの香り。一体どこからだ?と周囲に視線を巡らそうとすると、いかにもダルそうな声がかけられる。
その声に反応して、「皆守クン」と呼ぶ八千穂の声。
振り返ると、くしゃくしゃ頭で声から想像するままのダルそうな表情。
足が長くてスタイルはいいようだが、やる気のなさがその良さを引き立たせない。
骨ばった手には、白く細い煙が流れるパイプ。
同級生だと紹介され、一応こちらも自己紹介をする。どうやら屋上でサボっていたらしい彼は、サボりの常習犯らしい。
やる気もなければ、協調性もなさそうだ。
《墓地》やこの学校のことについての情報を持っているようには見えない。
その時、俺の頭は利用価値なし、と判断していた。
しかし――
「お前が楽しい學園生活を送りたいなら、ひとつだけ忠告しておく―――。《生徒会》の連中には目をつけられないことだ」
そう言った時、一瞬だけ見せた瞳。
鋭く居抜くように、こちらを探るような視線。
何者だ、こいつ……只の生徒ではない、そんな予感がした。
これほどまでに強い視線を一瞬で隠すことが出来る。そして八千穂の様子からするに、周りは彼がこんなに強い視線を持っている事に気付いていない。見事に周囲を騙し通している彼。
「ミナカミコウタロウ」
面白いヤツ。本心を見せずに上手く隠す。
やる気がなさそうなのは、わざとそう見せているだけなのかもしれない。ふと、そう感じた。
わざわざ隠す、その理由は?何を隠している?本当のお前は?考えれば考えるほど、面白そうだ。
隠されれば見たくなる、禁止されればやりたくなる、逃げられると追いたくなる。
まさに《宝探し屋》の好奇心にに触れるような、そんな欲求。
いや、《宝探し屋》というよりは、《葉佩九龍》のというべきか。
利用できるかできないか、興味を引かれるかそうでないか。
唇の両端を軽くあげただけの簡単な笑顔をみせる。
急に名前を呼ばれた皆守は、訝しげな表情で俺を見た。
「忠告ありがとう。肝に命じておくよ」
『利用価値なし』は撤回するよ、ミナカミコウタロウ。
価値があるかないか、それはまだ未確定。だが、《探索》する価値はあり。
興味津々。
葉佩九龍は、ミナカミコウタロウに、非常に興味有り、だ。
…九龍が腹黒キャラに。予想外の展開です(滝汗)