おやすみかわいいこ
「……………………ズルイ」
「……あぁ、皆守のこと?」
たまたま前の時間の担当教師は、時間ギリギリまで授業をするタイプで。
終わったと同時に駆け出してD組に行けば、すでにそこに龍麻と皆守の姿はなかった。
いつもの場所にいるだろうと、屋上に走ってきて目に入った光景が、コレだった。
龍麻の膝の上に乗っているのは、くしゃくしゃと癖の強い、チョコレート色の髪。
身動き一つしていないことから、よほど安眠しているのだろうか。
龍麻は時折、読んでいる本から目を離し、皆守の髪を優しく撫ぜてやる。
秋の外気は低温だが、日が差している部分は暖かい。
そんな昼寝には最高の場所で、九龍の天敵である皆守は、龍麻の膝枕にて極上のお昼寝タイムを過ごしていた。
「やっと寝付いたから、騒ぐなよ?」
「……ハイ。でも、かなり羨ましいんですけど」
本当なら叩き起こしてやりたい所だけれど、先手を打たれては、それもできない。
ぽん、と龍麻が自分の隣を叩いた。此処に座れということなのだろう。
九龍は素直にそれに従い、隣に座った。
背中には太陽熱で暖められたコンクリートの感触。
接触した部分から、龍麻の体温がじんわり伝わってくる。
「肩、貸してあげる。膝はまた今度」
そう言われて遠慮無く、とすん、と頭を乗せた肩は細く。
近付いた首筋の白さが目に毒だなぁ、と思いながら、微かに鼻腔をくすぐる甘い甘い、彼自身の匂いに目を閉じる。
おやすみ。
小さな声で呟かれた言葉に、答えたつもりだけれど、口は思ったように声を発してくれなくて。
ちょっと笑いながらの言葉が、優しく耳に届いて、その優しさを感じれただけでも嬉しくて、自分は今にやけた顔をしているだろう。
降り注ぐ太陽の熱が気持ち良くて、ずるずると睡魔に引っ張られていくのを感じた。
ページを捲る微かな音と、龍麻の呼吸の音、体温。皆守から香る、甘いラベンダーの匂い。
こうして側にいるだけでも、ほっとする。
もう少しだけ、この、穏やかな時間を。
***
午前中、屋上での休息。
どちらかというと、九龍よりも皆守贔屓な黄龍様。
同じクラスなので、一緒にいる時間が長い所為でもありますが…
皆守のようなタイプの人間をほっとけないようです。
2005,10,12