仲良きことは
.08.大人の余裕? ―― 2005.10.26



「最近は皆守君とはっちゃん、仲いいよね」

片手にアイスコーヒー、片手にコーラ。
ピアニストの傷一つない長い指が、冷えたグラスを持っていた。
どちらも黒い色で、取手の肌の青白さが際立っている。

ドリンクバーで飲み物を注いで、いざテーブルに戻ろうとしたら、聞こえてきたのは九龍と皆守の口喧嘩だった。今はまだ授業中で、店内にいる客はそれほど多くはないが、やはり大声で喧嘩するのは如何なものか。
二人の喧嘩は日常茶飯事で、周囲の人間もいい加減慣れた。
最近では、喧嘩というよりもじゃれ合いに見えることもあり、微笑ましいものを感じる。
そんな心境の変化からか、口をついて出たのが、冒頭のセリフだった。


「テメェ、嫌いだからってこっちに寄越すな」
「いーじゃん。減るどころか、増えてるんだぞ? 喜べ」
「人のカレーに生ピーマンを入れるな!」
「だってサラダに入ってんだもん」
「"もん"とか言うな、似合わねぇ」
「あ? 俺は何をやっても似合うんだよ」
「…………流石に今のはヤバいだろ。180近い不良転校生が、語尾に"もん"って」



「そうだね。喧嘩ばかりしていたから、仲良くしてくれるのは嬉しい限りだ」

片手にオレンジジュース、片手にアイスコーヒーを手にした龍麻が、立ちつくしていた取手の隣に立った。
自分の肩の辺りにある龍麻の顔を見て感じるのは、見守るような温かい温度。
龍麻と皆守と九龍と、いつも彼らは一緒にいる。
3人でいるのを見る時、龍麻からはその暖かさが常に感じられていた。

否、その時だけじゃない。
他の仲間たちといる場合でも、龍麻に見守られている、という感覚をいつも無意識で感じていた。

「…………龍麻君は寂しくないのかい?」
「ふふっ……、取手は俺のことを心配してくれているのか?」
「え、あ、そ、その……」
「二人が仲良くなって、俺が寂しい思いをするんじゃないかって」
「そ、そうなんだけど。…………、やっぱり、寂しいかい?」
「いや。ちゃんと隣に取手がいるから、寂しくないよ」

間近で龍麻の笑顔を見ることになり、取手の顔が、これでもかというくらい桜色に染まった。



( どこか遠い所で、たった一人で、僕達を見守っているのですか? そんな気がするのです )