ある日の休み時間
18.伊耶那美 ―― 2005.12.13
「片方は死者の国の神で、片方は生者の神。これって究極の遠距離恋愛って感じしない?」
「……決別宣言してただろ、確か。どっかの坂で」
「黄泉比良坂だよ、皆守」
皆守がつまらなそうに(実際とてもつまらない)教科書をめくる。
ただ、ぺらぺらとめくられ続ける教科書の上に、龍麻は開いたノートを置いた。
可愛らしい字とカラフルなペンで書かれたノートは八千穂のものだ。
皆守が顔を上げて、これまたつまらなそうに見てくる。
それを無視して、右手に持ったシャーペンの先でノートを指し示す。
そこには、"黄泉比良坂"という文字。
「愛し愛され、憎し憎まれって感じ? 愛が深かった分、憎しみもまた深かったのかもなぁ」
「女の恨みは恐いって事だろ、つまりは」
頬杖をついて、ノートにぐるぐるとうずまきを書き続けている九龍。
龍麻はまた別のノートを開いて(取手のノートだ)、九龍に差し出す。
「そういうもん?」
「恨みっていうか、情が深いのかもね。女性は。ほら、皆守。さっさと手を動かす」
ノートを写しながらも、皆守と九龍の口は達者に動いていた。
手が止まりそうになる度、龍麻の注意が飛ぶ。
「俺、あんまりベタベタされるの苦手ッス」
「淡白なヤツ。テメェの場合、誰彼かまわず関係を持ちそうだよな」
「博愛主義と言え」
「ただの節操無しだろ」
「その分、皆守は一途そうだよね」
「女々しいヤツ」
「尻軽よりマシだろ」
シャーペンの動きがピタリと止まる。
互いに睨み合って、一歩も譲らない状態。
先に目を逸らした方の負けだ。
「ねー、国語の勉強じゃなかったの? 話変わってるよ。 補習で点とらないと、皆守クンも九ちゃんも駄目なんでしょ? 真面目にやらないと、龍麻クンがすっごい笑顔で怒ってる」
「「……あ」」
「実際に行ってみようか、黄泉国」
( 嫌いな科目は国語です )