unknowable
15.漂泊 ―― 2005.10.04
学園の秩序を正す義務がある――――
目を閉じて思い出すのは、数度会ったことのある生徒会長の声。
「ちつじょ、ねぇ……」
所詮、漂泊の身の上の九龍にとって、特定の場所にこだわる気持ちは分からない。
1ヵ所に留まることを知らないので、その場所の秩序とか平穏とか、それらを守る理由が分からない。
荒れたなら荒れたでいいじゃないか。
それでも生き残る力を、九龍は持っている。
信じられるのは己の力のみ。どれだけ群れても、結局は自分しか自分を守れない。
危険な状態になればなるほど、人は自分のことしか考えられないのだから。
誰かを信用するなんて、無理な話。
「まるで正反対だ」
多くの者の平穏を守ろうとする彼と、自分以外はどうでもいい俺。
どちらが幸せか、悩んでも分からない。考えても分からない。
( だって俺は"守りたい"と思う何かに、会ったことがないから )
答えは、見えない。
( いつか俺にも分かる時がくるのだろうか )
鼻腔をくすぐる、土と硝煙の匂い。腐った肉と鉄くさい血の匂い。
周りに漂うだけでなく、己の身にもその匂いは染み付いている。
( これが、俺の匂い。俺の全てだ。生まれた瞬間はこういう匂いはしなかった )
結局、誰かと共にある道など、俺には存在しないのだろう。
一生、《協会》に縛られ飼い殺しにされて孤独に終わるのだ。
ぐしゃり、と。血と肉が潰される耳障りで、聞き慣れた音。
苛立つ感情をまぎらわすように、九龍は散らばった化人の肉片を踏み潰した。
また、血の匂いが広がる。