湧き出る感情に絡めとられてしまえ
11.M92FMAYA ―― 2005.09.19



慣れた手つきで、彼は相棒ともいうべき鉄の塊をいじっている。
バラバラに分解されたソレは、ひととおり点検を終えると、瞬く間に元の形に復元される。
流れ作業で次々と分解され、復元される、普通の高校生の日常生活からかけ離れた、それら。

そして、最後の一丁に手をかけた時、それまで黙っていた皆守が声をかけた。

「かなり使い込んでるな、それ」
「んー? これはねぇ、人から譲り受けたものなんだ」

先ほどまで彼の手で診断を受けていたソレらは、彼が此処に来てから買ったものだ。
(彼がネットを見て「欲しい、欲しい」と言っていたのを、皆守は見ていた)
しかし、今、彼が手にしているソレは皆守も見たことがないタイプだった。

気になるほど傷付いているというわけではないが、長年使われてきたというのが分かるものだ。
一体どんな代物なのか気になるようで、皆守はじっとソレを見ていた。
目新しい玩具に夢中になる子供のような、その姿に彼がクスリと笑った。

「その人が存在した証、俺が生きてる証」

まるで恋人を見るように、ソレを見つめる瞳は柔らかく。
まるで恋人に触れるように、そっと撫でる指先は優しく。

彼の意識、その全てを奪い去った"その人"に。

ふつふつと煮えあがるような、暗く醜く熱を持った何かが、躯の内に巣食いはじめた気がした。