貞操を賭けた選択
08.きみのために調合しました ―― 2005.10.10



「最近お疲れ気味の屋上の支配者・アロマラベンダーカレーマニア少年にこれをプレゼント」
「…………………………まず、その貼り付いた笑顔が胡散臭い」
「俺と龍麻サンとの愛の一時をことごとく邪魔してくれるムカツク奴を、ビューティーハンターすどりんに媚薬を飲ませて引き渡してしまおうなんて、そんなことは考えてないよ? だから、安心して受けとって飲んじゃって」

ずずいっと差し出された手には、濃い紫色の小瓶。
寝ていた所を起こされた皆守の機嫌は最悪だ。
それとは逆に九龍はひどく興奮しているようで、長い台詞を息継ぎなしで、しかも早口で喋っている。
よく舌を噛まないものだ、と皆守は感心していたが、九龍の言った言葉に怒りを通りこして呆れてしまう。

「……………………テメェが飲め」
「冗談だよ。本気にすんな」
「お前なら、本気でやりそうだ」
「飲ますなら龍麻サンに飲ませる。…………さぁて、皆守甲太郎クン? 君が飲んで朱堂の餌になるか、それとも龍麻サンに飲ませて俺の獲物になっていただくか。どっちを選ぶ?」

小瓶を愛しそうに頬擦りして、にたりと笑った。
皆守を見下して、九龍はちゅっと可愛い音をたててキスをする。

まさに、究極の選択。
自分の貞操を捨てて龍麻を守るか、否か。

思考をぐるぐると巡らせていた皆守は、いい案が思い付いたようで、唇の端だけを持ち上げて笑う。
寝起きのため、やる気が感じられなかった瞳には鋭い光が宿った。

「龍麻が飲んで、俺がいただく」
「…………却下。せっかく作ったのをなんでお前の為に使わなきゃなんねぇんだよ」

かけていた眼鏡を押し上げて、読んでいたページにしおりを挟んで小脇に置いた。
睨み付けたまま、互いに全く動く気配のない二人を見て、龍麻は深いため息をつく。

「…………なんなら、九龍が飲んで皆守に食べてもらえば? もしくはその逆とか」

「それだけは絶対イヤだ」
「それだけは絶対にイヤです」