Gaeter belt
06.ガーターベルト ―― 2005.08.27
「うーん、見かけによらず大胆な方だねぇ」
ぴろろん、と両手でそれを抓むように目線の高さまで持ち上げた。
右から見ても、左から見ても、やっぱり変わらない。
窓に向けてみれば、日に照らされて向こう側が透けて見える。
感謝の言葉をしたためた手紙と一緒に届いた箱からは、黒のレースが惜しげもなく使われた、所謂ガーターベルトというやつで。
これはお誘いととっていいものか、それとも素敵な彼女に着けてもらって夜を過ごして、ということなのか。
とにかくコレをどう扱ったらいいのか、九龍は悩んでいた。
せっかく貰ったものを捨てるのは勿体無い。
第一、女性からのプレゼントなのだ。
知らない人からの物なら捨てても構わないと思うが、相手は依頼人で、何度か手紙のやり取りをして、それなりに信頼関係を気付いている相手。
さぁ、困った。
「九龍。マミーズに行くんだけど、一緒に……」
コンコンと軽快なノックと共に入ってきたのは、九龍が思いを寄せる龍麻。
龍麻からのお誘いなんて、言葉では言い表せないほど嬉しいのだが。
なにぶん、タイミングが悪かった。
新月の夜を思い起こさせるような黒い瞳が真ん丸に見開かれ。
ドアノブに手をかけたまま、龍麻は固まった。
「置いてくぞ、龍麻。……? 何、固まってんだよ。九龍は何やっ、て……」
龍麻の後ろから聞こえてきたのは、九龍の天敵、目下ライバルの皆守の声。
固まったままの龍麻を変に思って、皆守が龍麻の背後から九龍の部屋を覗き込んだ。
そして、皆守もフリーズ。
「…………あー……、九龍。君も朱堂と同じ、趣味?」
「……どっからパクってきたんだ? ソレ」
「誤解です誤解です、龍麻サン! それはとてつもない誤解です! パクったんじゃねぇ、貰ったんだ! 変な言い方するな、皆守!」
「へぇ……依頼人がねぇ」
「随分とまぁ、深い付き合いみてぇだなぁ。九龍」
「皆守の言い方はエロくせぇぞ」
龍麻と皆守はベッドに並んで腰掛け、誤解を解くために必死で説明していた九龍は、何故か床の上に正座をしていた。
なんとか誤解を解くことができた九龍は、ほっと胸を撫で下ろす。
九龍の紅い瞳が涙ぐんでいるのは、それほど必死だったということだろう。
「で、どうすんだ? コレ」
「そうなんだよなぁ。まさか捨てるわけにもいかねぇし、だからと言って使うのもなぁ」
届けられた時に入っていた箱の上に、くしゃくしゃになって置かれている黒いガーターベルト。
白い肌の美脚の人が履いたなら、さぞかし色が映えて艶めかしいことだろう。
世界を股にかける九龍に、ガーターベルトが似合う女性の知り合いは大勢いるが。
今、思うのは。
目の前でベッドに座る、白い滑らかな肌をした美貌の君。
「龍麻サン、履いてみません?」
「イ・ヤ」
にっこり笑って、ばっさりと九龍の提案を切り捨てた龍麻だったが、その目は全く笑っていなかった。