呼んで
03.なまえ ―― 2005.08.18



『ハバキクロウ』
これが俺の新しい名前。
これが俺の新しい呼び名。

本当の意味で"俺"を呼ぶ人は、もういない。


「なに惚けてるんだ、九龍。置いてくぞ」


ラベンダーの香りを漂わせて、優しい声色で俺を呼ぶ。
いい声。初めて聞いた時に思った。好きな声だなと思った。
いつからか、その声がとても優しい声で俺の偽りの名前を呼ぶようになった。
名前を呼ばれる度に、胸がほわんと温かくなって嬉しくなる。
それと同時に湧きあがるのは、嘘をつき続けていることへの罪悪感。

「ん、今行くよ。甲ちゃん」

君が呼んでくれる名前が、本当の俺の名前になってくれればいい。
君がそう願ってくれるなら、俺は――――