特記事項返上
02.女好きです ―― 2005.08.07
にこり、と笑う姿は雑誌で見る外国人モデルのよう。
極自然な立ち振る舞いは、つねに相手(特に女性)を気遣うもの。
帰国子女だという九龍は、レディファーストの精神が自然に身についていた。
嫌味なく披露されるそれに、學園の女子からの好感度を集めていた。
「お、前髪切った?」
「うん。ちょっと邪魔だったから、昨日の夜切ったんだー」
「可愛い、似合ってるよ」
「へへへ、ありがと」
気付かないような些細な変化にも敏感に気付き、さらりと褒めてくれる。
「リカ嬢。昨日はお手製のクッキー、ありがとうね。美味しく食べさせてもらいましたよ?」
「ふふふ、それは良かったですの。九サマのお気に召したようで、リカも嬉しいですわ」
「世界を渡りに渡った俺ですが、あれほど美味いクッキーは初めて。お礼に今度食事でもどうですか?」
「あら、それは嬉しいですの。ご一緒しますわ」
「色よいお返事。こちらこそ、光栄の至り」
そう言って椎名の小さな白い手を掬い取り、跪いて、手の甲に軽くキス。
椎名のひらひらとしたお姫サマみたいなファッション。
跪く男は、黒の学生服に身を包んだ銀髪の王子サマ。
どうでもいいが、ここは教室。周りには頬を赤く染めた女子と、九龍の口から出る口説き文句に呆れた男子がいた。
それとはかけ離れた教室の端っこの席で、同じく呆れたように見ている皆守と、面白そうに眺めている龍麻。
「…………あんなうすら寒いセリフを言ってて、アイツはなんで平気なんだ?」
「皆守は絶対言えないよな、あのセリフ」
「当たり前だ」
「でも、案外嬉しいかもよ?九龍がやるみたいに口説かれたら」
「ほぉ……お望みなら、俺が口説いてやるが?」
つい、と皆守が龍麻の細い顎をつかみ、顔を近付けた。
普段はパイプを挟んでいる長く武骨な指が、顎のラインをなぞっていく。
まさか皆守がこういう行動にでるとは思っていなかった龍麻は、目を見開いて皆守の顔を見つめている。
してやったり、と微笑みを浮かべる皆守。
不機嫌の代名詞ともいえる皆守が、笑ってる!?
九龍と椎名の「お姫サマに傅く王子サマ」の光景に目を奪われていたクラスメイトたちは、今度は教室の隅っこで繰り広げられる光景に目を奪われる。
笑わない皆守が微笑む姿は、いつにも増して男の色気に溢れているような。
初めは驚いていた龍麻も、自分の調子を戻してきたようで。
やれるものならやってみな、と挑発するような笑みを浮かべた。
軽く瞳を伏せて浮かべる美しい微笑みは、傾国の美。
甘く吐き出される吐息、極上の感触に二つとない美貌、孤高の精神。
一瞬でも気を抜いたら、こちらが食われかねない危険な花。
なんというか、雰囲気がエロい。
九龍と椎名が昼の恋人同士なら、皆守と龍麻は夜の恋人同士。
真昼間の教室でこんな雰囲気いいんですか?とツッコミをいれたくなる。
女子も男子も顔を真っ赤にし、一部の女子はきゃあきゃあ騒ぐ。
一部の男子は、龍麻相手ならイケるかも……と危ない考えをしていたり。
そんな周りに気付いているのか、龍麻は煽るように皆守の首に手を伸ばす。
するっと龍麻の腕が皆守の首にまわり、皆守の顔を近付けた…………かと思いきや。
「そこのエロアロマ!!“俺の”龍麻サンに俺の許可なく触るんじゃねぇ!」
葉佩九龍、無類の女キラー。
でも近頃、美貌の男・緋勇龍麻に心奪われ中。
特記事項「女好きです」は、近々、返上予定。