キミニオチル
Atobe×Tezuka


フェンスの向こうで進む試合。
圧倒的な強さでもって、彼は試合を手中に収めていた。
完璧な強さと華麗な技、決して怯まず、気高く、美しく。
強さだけでなく、彼のプレイは誰をも魅了するものだった。
初めて見た時から、手塚は彼のプレイに魅せられていた。

フェンスを握り締める。指が白くなるくらい力を込めた。
このフェンスを取り払って、彼の隣に立ちたい。彼と試合がしたい。
自分のテニスの実力は彼に及ばないものではない。いつか、彼と試合することも可能だろう。しかし、手塚を支配するのは試合をしたいという気持ちだけではなかった。

彼の視線が、寵愛が、全てが、自分だけに与えられるとしたら。
自分だけに、その手が差し延べられるとしたら。
たとえ茨の道だとしても、自分は手を伸ばすだろう。
眩暈がするような幸福の中で、自分は目を閉じるだろう。

力強く握ったフェンスが、みしり、と軋んだ音を立てる。

彼と、視線が合った。ずっと自分が見ていたことに気付いたのだろう。
蒼い瞳を細めて、彼が笑う。
「見ていろ」と、彼の唇が動く。
そして、キレイな指先が、黄色いボールを空に放つ。

胸が大きく跳ねた。握った手にさらに力がこもる。
その瞳に、その姿に、この身が焼き尽くされる気がした。



中2設定。目指せ、片思い手塚。
跡部攻を書いてみたかったのです。難しい。
2006,02,23
2008,09,21 改題