恋敵宣言
Kirihara×Hiyoshi


切原との待ち合わせ場所であるストテニ場まで、あと少しで到着する。
待ち合わせ時間までは、10分くらい余裕があった。
時間に遅れて切原の機嫌を損ねる心配はなかったが、別のことで日吉は頭を悩ませていた。

「ねぇってば、日吉先輩」

さっきから制服の裾を掴んで離さない、1年坊主。着ている制服は違う学校のもので、それほど顔見知りという訳でもない……と日吉は認識していたのだが、相手は違ったようだ。

「…………なんだよ」
「なんかさ、さっきから素っ気無いよね、俺に対して。せっかく会えたんだし、もう少し優しくしてくれてもいいと思うんだけど。それとも何、俺のこと嫌い?」
「……いや、嫌いとかそういう問題じゃないだろ」
「そういう問題なの。ねぇ、俺のこと嫌いなの?」

ちょっと待て、と日吉は言おうとしたが、自分の制服の裾を掴んで見上げる越前を見たら何も言えなくなった。キラキラとか、うるうるとかいう効果音がつきそうな目で自分を見上げてくる越前。たとえそれが演技だとしても、たとえ生意気な越前であろうとも、自分より小さい奴を傷付けるのは心が痛むわけで。意外と小動物には弱い日吉であった。
結局、あ、う、と言葉に詰まってしまい、日吉はどう答えるか必死で悩んでいた。

「…………、人のカノジョに手ェ出してんじゃねぇよ、越前リョーマ」

地を這うような、切原の低い声。そのあまりの低さに、日吉は驚きながら後ろを振り向いた。
するとそこには、充血しかけた目で越前を睨み付ける切原が立っていた。
こういう目をした切原の厄介さを知っている日吉は、額に手を当てて空を仰いだ。

「あ、髪がワカメの人」

面倒なことになったと疲れたような溜息をつく日吉を余所に、越前はさらに切原を挑発するような態度を崩さない。

「はぁ……。というか、彼女って誰のことだよ」
「もちろん、日吉君のこと」
「勝手に彼女にしてんじゃねぇ」
「ひっでー!いいじゃん、たまにはそう言ったって」
「たまにだろうと、いつもだろうと、嫌なものは嫌だ」

自分の存在を忘れて痴話喧嘩を始める二人。
それにムッとしながら、二人の間に爆弾を投下。


「ふーん。じゃあ、俺の彼女になってよ。日吉先輩」


「はっ!?」
「…………へぇ」

その爆弾は、終わりが見えなかった二人の喧嘩を見事に一発で止めた。
それだけではなく、切原のとても短い導火線に火をつけた。つまり、切原は、キレた。
収まりかけていた目の充血はぶり返し、ギラギラした輝きを持って越前を睨み付ける。

「いい度胸してんじゃん、越前。来いよ、潰してやるから」
「返り討ちにしてあげますよ」

に、と挑戦的な笑みで持って、越前も切原を見る。
そのまま二人は、ストテニ場へと向かって行った。
残されたのは、展開の速さについて行けなかった、日吉ただ一人。

「お前等……俺を無視して話を進めるなよ」



初・越前。難しいッスね。 2006,02,23
2008,09,21 改題