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不機嫌な、
( Sengoku×Atobe )
「跡部クンって、たとえるなら猫だよね」 俺、猫って可愛いから好きだよ。 思ったことを正直に言ったら、すごい顔をされた。 眉根をぎゅっと寄せて、どっかの部長(青学の手塚クンとか、立海の真田クンとか。あ、真田クンは副部長だった)みたいに眉間に縦皺ができている。 綺麗な顔なのに勿体無い。 けれど、そんな顔をしている彼も可愛いと思ってしまう辺り、千石も相当、跡部にゾッコンだ。 つまり、夢中。 現在進行形で、千石清純は跡部景吾に夢中だ。 「毛の長いふわふわの猫とかじゃなくて、短毛の猫でさ。血統書付きっぽいのは同じだけど、細めのすらっとした体付きの猫。そんなイメージ」 「いきなりワケの分からねぇこと言ってんじゃねぇよ」 「えー、だって跡部クン、本ばっか読んでて相手してくれないんだもん」 腹ばいになって寝ていたベッドから体を起こして、ソファに座る跡部を見る。 ふかふかと柔らかいクッションを抱き締めた。 肌触りが気持ちいいクッションは、千石のお気に入りだ。 もう一つ、同タイプで違う色のクッションがある。 それは今、跡部の肘の下で腕置きと化していた。 2人がいる部屋は跡部の自室で、豪華な造りをしていて無駄に広い(と千石は思うけど、跡部に言わせると普通らしい)。 もちろん、彼の座るソファも千石が抱き締めているクッションも高価なものだ。 長い足を優雅に組み替えて(普通の動きも彼がすると絵になるから不思議)、授業中や読書の時にだけかけているという眼鏡を親指で軽く上げる。 小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、跡部は一言、 「俺が猫なら、テメェも猫だろ。誰にでも擦り寄ってく、猫」 と言って、跡部は途中まで読んでいたハードカバーの洋書に視線を戻した。 せっかく跡部の意識を自分の方に向けたと思ったら、直に反らされてしまった。 さっきまでのように、跡部は読書に夢中だ。 千石がこの部屋を訪ねた時から続いていた、跡部の読書。 部活の休みが久しぶりに重なった休日。 できることならずっと一緒にいたいのだけれど、そんな簡単にできるわけもなく。 やっと一緒にいる時間が出来た、と思ったら、跡部は読書に夢中。 テニス部部長と氷帝学園生徒会長を兼任している彼は多忙で、読書の時間を取ることすら難しいらしい。 丸一日休みの今日は、跡部にとって思う存分読書が出来る日なのかもしれないが。 恋人が隣にいるのに。 跡部の趣味が読書なのは知っている。自由な時間がないのも知っている。 知ってはいるけど、分かってはいない。 千石はベッドから降りてソファの方へ近づき、跡部の隣に腰を下ろす。 重みでソファが沈んだ。それに気付いた跡部が、本から目を離して千石の方に顔を向ける。 邪魔をされて、いささか不機嫌のようだ。 睨みつけてくる跡部を気にせず、腕をするりと首に回して、自分の体を近付ける。 千石が何をしたいのか。跡部には予想がつかなかった。 とりあえず様子をみようと思ったらしく、そのまま動かないでいた。 ぐっと顔を近付けて、唇と唇が触れそうなくらいまで近付いて。 「気紛れな猫がさ。ときどき甘えてくるのって好きなんだけど。あんまり冷たいと」 「…………なんだよ」 「無理矢理、容赦なく、押えつけてやりたなっちゃうんだよねぇ」 軽い口調とは裏腹に、千石の瞳は冷たい光を放つ。 間近でそれを受けた跡部は、目を見開いたまま、千石から視線を外すことが出来なかった。 瞳は鋭いのに、口元はにっこりと笑みを浮かべているから、余計に恐さが増している。 力を失った跡部の手から、本がバランスを失って、柔らかな絨毯の上に鈍い音を立てて落ちた。 跡部が慌てて本を拾い上げようとしたけれど。 頬を押えてそれを阻止し、顔を自分の方に向けさせる。 噛み付くような口付けを、跡部の意識が本の存在を忘れるまでし続ける。 途中、カシャンという音がして、冷たい感触がした。 眼鏡を外してなかった、と思ったけれど構わず口付けを交わし続ける。 しばらくすると跡部の腕が自分の首に回って、ぎゅう、と引き寄せられた。 体がさっきよりもくっ付いて、服越しに互いの体温と鼓動が伝わる。 それが嬉しくて、千石は跡部の柔らかでキレイな唇を甘噛みする。 甘く、小さく漏れた声を押えつけるかのように、さらに深く唇を重ねた。 これからの君の時間は、僕のもの。 落ちたままの本が、床の上で寂しそうに転がっていた。
千石の場合、上辺は人懐こそうだけど、本当の意味で心を許すことはないと思われる。
『最強チーム』をやっていたら、そう思いました。 2005.12.03 |