ぎゅっと抱き締められるのが好き。
額にキスをされるのが、頬にキスをされるのが、好き。
何もしないで手を繋いで隣にいる、その時間が好き。
内緒話をするみたいに、小さな声でお喋りをするのが好き。



寸止めがお好き
Kirihara×Hiyoshi



学校が違うから、会える時間は自ずと少なくなる。
ましてや、県を跨ぐとなると、交通費だってかかるから頻繁には会えない。
でも電話やメールだけ、なんてつまらない。
直接、顔を見たい。声を聞きたい。君に触れたい。
だから、俺は何をしてでも君に会いに行く。

二人きりで部屋にいて、隣に座って。
テレビを点けてみれば、毎週定番の音楽番組。
特に好きなアーティストが出ているわけではないけれど、なんとなく見ている。一緒に。
クリスマスが近いから、流れてくる曲はクリスマスをテーマにしたものが多い。

今年も後少しなんだ、と今更ながらに思う。
来年、自分たちは3年になって、きっとテニス部の部長になって。
今以上に会える時間が少なくなるのかと考えたら、切なくなった。

「ひーよー」
「…………なんだよ」
「すっげぇキスしたい」
「……もうしてるだろ、手に」

指と指を絡ませて繋がれた手と手。
ちょっとの隙間もなく握った手を、切原は自分の口元に運んだ。
軽く音を立ててキスをすれば、日吉の頬がピンク色に染まる。
くっついている部分の温度が上がって、伝わる鼓動がちょっとだけ早くなる。
スキンシップに慣れていない、しかも素直じゃない日吉は、口では何も言わないけれど、体の方は案外簡単に反応を返してくる。
にっと笑って、切原は繋いだ手を床の上に下ろした。

古武術を習っている日吉の手は、柔らかくて滑らかというわけではないけれど、形の整った細くて冷たい手が切原は好きだった。

「ねぇ、日吉」
「今度はなんだ、切原」
「キスするよ? 今度は口に」
「……、な、ちょ」

そっと指先で薄い唇を触った後、自分の唇を触れ合わようとする。
近付いた瞬間、日吉が短く呼吸を止めて、体を硬直させたのが分かった。
いつまで経っても行為に慣れない日吉は、恐がっている。
キスをしたら、そのままベッドに連れ込まれるのではないかと。

いっつもそんなに酷い目に合わせてたかな、俺。
思い返してみるけれど、思い当たる節がない。

でも、硬直が解けない日吉の姿を見ていると、酷いことをしているようで可哀想に思えてくる。

……だから今日は、触れるだけで。それ以上はやらない。

ホントに少しだけ、接触して離れる。
よほど意外だったのか、日吉がびっくりした目で見ていた。
見開かれた瞳の色が茶色いなぁとか、睫毛長いなぁとか考えてた。
でも最後に思うのは、好きだなぁっていうこと。

やっぱり、すっげぇ好きだよ。

言葉にはしないけれど、伝わるか分からないけれど、伝わればいいと思う。
日吉の長い前髪を押し上げて、額を晒して、そこにキスをしようと顔を近付ける。

それに比例するように、ゆっくりと閉じられていく瞳。
日吉が自分を信頼してくれている証のような気がして、嬉しかった。



(本音を言えば、もっと深く繋がっていたいんだけど)